株式会社Wunderbar
長尾 慶人
エンタメDXに挑戦するスタートアップが設立3年目で急成長「最初の2年は融資を活用しながら足元を固めていた」
2022年12月21日
企業や商品に有名タレントを起用するプロモーション方法は古くから行われてきましたが、
価格やアクセス面のハードルの高さから、活用できるのは主に首都圏の大企業に限られていました。
株式会社Wunderbar(ヴンダーバー)は低価格かつオンライン完結可能なタレント素材提供サービス「Skettt(スケット)」を2022年3月にリリース。中小・地方企業でも手軽に有名タレントを起用できる仕組みを実現しました。
同社の設立は2019年3月。主に受託制作の仕事で売上を立て、デット(融資による資金調達)を活用しながらサービス開発の準備を進めていたそうです。
本インタビューでは代表取締役CEOの長尾慶人さんから、創業初期の資金繰りの課題やサービスへの思い、今後の展望などを聞きました。
代表取締役 長尾 慶人(ながお・けいと)さん
株式会社Wunderbar代表取締役CEO。光通信系の企業でインサイドセールスを担当、後に福岡支社の立ち上げを任される。GMOインターネット株式会社ではSEOコンサルタント、株式会社ディー・エヌ・エーではキュレーションメディアの営業を担当。事業アクシデントを機にANVIE株式会社を設立し約4年経営し株式を手放す。2019年3月、株式会社Wunderbarを設立。エンタメギフトサービス「VOM」、タレント素材提供サービス「Skettt」を運営。
インタビュアー:若林 哲平
株式会社INQ代表取締役CEO、行政書士法人INQ代表。1980年生まれ。青山学院大学経営学部卒。融資サポートを中心に、さまざまな領域のスタートアップのシード期の資金調達を支援。年間130件超10億以上の調達を支援するチームを統括。行政書士/認定支援機関。
事業に集中するため「時間を買う」感覚で資金調達のサポートを活用
ーーまずは、起業当初の資金繰りの課題について聞かせてください。
資金まわりは自分が知見を持っていない分野だということが課題でした。なので、誰かに頼りたかったんですよね。
理想は調達サポートの実績が豊富で、スピード感を持って取り組んでくれるパートナー。
自分たちで探したり、知人に紹介してもらったりしていました。
ーー自社でサポートなしで資金調達をしようとは思わなかったですか。
サポート費用を節約したい場合は自分たちでやってもいいと思いますが、融資を検討していた時期は事業に集中したかったので。サポートしてもらった方が、事業にリソースを割くことができるし時間を節約したいと思い、お願いしました。
ーー最初の資金調達はデットで、創業初年度に2,000万円の融資に成功していますね。
エクイティ(株式発行による資金調達)は検討していなかったのでしょうか。
創業時にエクイティを使わなかったのは、私の性格によるところが大きいと思います。
営業をやっていたので、数字や事実に基づいて相手を口説き落とすことは得意としていたのですが、まだ存在しないサービスをあるように見せるといった事は苦手でした。このようなタイプだったので、まずは手堅く日本政策金融公庫の融資を利用しよう、と。
今はサービスもありますし、大きく成長させるフェーズでもあるので、エクイティも活用しています。2023年の夏までには2億円ほどの大型調達の実施も予定しています。
ーーまずデットで足元を固めて、成長フェーズでエクイティを使うのは理想的な流れだと思います。
私は、株は命のようなものだと思っています。
ですから、役員を増やすときに備えてできるだけ残しておきたかったんですよね。
スタートアップって最初は売上が立ってないことが多いので、なかなかデットを使えない。
弊社は受託で売上を上げていたおかげでデットを利用できたので、使えるうちに使っておこうという考えもありました。
INQの魅力はスタートアップ目線とスピード感「INQさんがいないと困る」
ーーパートナーにINQを選んだ理由を教えてください。
自分たちで探したり、知人に紹介してもらったりして相談してみた中で、
INQさんが一番実績があり、スピード感を持って取り組んでくれそうだと感じたからです。
顧問税理士に相談してみましたが、資金調達サポートは得意ではなかったようで、代わりにINQさんを紹介してもらいました。
紹介してもらう前からINQさんの名前は聞いたことがありましたし、スタートアップ界隈でもよく名前が挙がっていたので、そういう意味でも期待は大きかったです。
ーー実際に資金調達サポートをINQに頼んで、どうでしたか。
最高でしたよ。スピード感を持って取り組んでくれましたし、スタートアップのビジネスモデルも理解してくれているので、スムーズに資金調達できました。INQさんがいないと困ります。
ーーありがとうございます。INQはどんな会社におすすめできますか。
おすすめできるのはやっぱりスタートアップ企業ですね。
私の経験上、スタートアップ企業はスピード感を求めている人が多いと思うんですけど、
INQさんはレスポンスが早いので満足できると思います。
資金調達に限らず、スタートアップ全般に理解がある部分も信頼できるポイントです。
15歳のときにジュノンボーイコンテストに入賞「エンタメ業界に憧れを持っていた」
ーーここからは長尾さんご自身のことと、Wunderbarについて聞かせてください。
ジュノンボーイコンテストで入賞したことがあるんですね。
はい、15歳のときですね。エンタメ業界に興味があったので、芸能の道に進みたかったんです。
北海道では1位でしたが、全国区の審査では7位という結果に終わりました。
※画質の悪さが時代を物語っているが、当時の宣材写真
その後は芸能事務所にも所属して、応援してくれる人もいたんですが、厳しい世界だったのもあり、割とすぐに諦めてしまいました。
ーー狭き門というイメージがあります。その後はどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。
高校を中退して最初に就職したのが、光通信系の会社です。営業としてバリバリ働いて結果を出し、福岡支社の立ち上げ担当に抜擢されました。
その後、18歳のときにGMOに転職してSEOコンサルタントとして働いていたら、DeNAからヘッドハンティングされ、キュレーションメディアの営業を担当することに。
しかし、売上を上げていたところで、事業アクシデントに見舞われてしまいました。
仕事が完全にストップしてしまったので、当時の仲間と一緒に起業しようということになりました。
それがANVIE株式会社(現:Recustomer)です。4年ほどボードメンバー(共同創業者 取締役COO)を務めた後、会社を離れることになりました。
ーーANVIE株式会社の経営後に、株式も手放しWunderbarを設立したそうですが、どのような理由から設立に至ったのでしょうか。
エンタメ領域に挑戦するためです。
もともとエンタメが好きで演者側として志していましたが、若いときに諦めたこともあって、コンプレックスを持っていたんですね。それでエンタメ自体を遠ざけてるところがありました。
エンタメと関係ない事業をやるのも面白かったのですが、ずっとエンタメを引きずっていることに気づいたので。また挑戦したいと思い、Wunderbarを設立しました。
ーー先ほどのお話にもありましたが、設立当初はサービスが無かったそうですね。
はい。サービスが無かったのでまずは、過去にSEOやWeb制作をやってきた経験を生かして、受託制作から始めました。エンタメ事業に挑戦し始めたのは、1〜2年かけてキャッシュを回せる状態になって余裕が出てきた頃です。
この準備期間を設けたおかげで、チームを作ることができました。
受託制作で外注していたメンバーをそのまま巻き込んで、新規事業を立ち上げることができたんです。
タレント素材提供サービス「Skettt(スケット)」で企業のブランディングに貢献したい
ーーサービスについて教えてください。
「Skettt(スケット)」というサービスを提供しています。簡単に言うと、PIXTAやアドビストックのようなストックフォトサービスの有名人版です。すぐに広告に使えるタレント画像・肖像画像を最短1カ月から、ライセンス利用できます。
これまで主にコスト面で敷居の高かった「タレントの起用」が手軽にできるようになりました。
200名以上のタレントを広告素材として利用できるため、他社とバッティングすることはほぼありません。
ーー広告にタレントを使う場合、すごく費用がかかりそうなイメージがあります。
これまで企業がタレントを起用するとなると、条件によっては数千万円の費用を一括で支払う必要がありました。予算の少ない中小企業やスタートアップでは、手が出ないですよね。
従来はまず大手の広告代理店が間に入り、都度撮影する必要があるなど、仕組みにも課題がありました。
CMとセットになるとさらに高額になりますし、ここに新聞や雑誌用の制作費用などもかかってきます。
Sketttは、一度撮影した素材を提供しますので、タレントは都度稼働する必要がありません。
制作は弊社で行い、芸能事務所と直接提携することで、価格を抑えることに成功しました。
ーー代理店と制作会社の機能を自分たちで担っているわけですね。どのような企業が利用しているのでしょうか。
大手上場企業から地方の中小企業まで、幅広く利用いただいています。
想定外だったのが、大企業が事業単位で利用するケースです。従来はタレントを起用したプロモーションは高額なため、大企業が会社単位で行っていたようですが、Sketttであれば事業単位の予算でも使えるということで、活用いただいています。
ーー広告素材はどのような媒体で使われていますか。
首都圏の企業はLPや広告用のバナーとしての利用が多いですね。一方で地方の企業はのぼり旗や看板に使う企業が目立ちます。
ーー首都圏と地方で使い方に差が出るのは面白いですね。さまざまな企業のブランディング向上に役立てられそうです。
「エクイティ=正義」ではない しっかり足元を固めてからでも挑戦はできる
ーー今後の展望を聞かせてください。
海外への進出と、イグジット(*)です。海外進出に関しては、どこの国から始めるかといった具体的な部分はまだ決まっていませんが、2年以内に実行に移す予定です。今は、アメリカに住んでいる友人に情報を提供してもらいながら、構想を練っている段階です。
*) 株式上場や効果で利益を得ること
イグジットに関しては、これからいろいろな資金調達手段を駆使しながらスケールして、5年以内には達成したいと思っています。今はまさに問い合わせが増えている段階なので、人材も必要です。セールスと広報とディレクターは絶賛募集中ですので、応募お待ちしています。
ーーこれから起業する人に向けてメッセージをお願いします。
周りに流されないようにしてほしいです。スタートアップ界隈にいると「◯億円調達しました」といったSNSの投稿を見かけることも少なくないので、「エクイティ=正義」と感じてしまう人もいるかもしれません。
もちろん自分のやりたいことが明確で、プロダクトをしっかり完成させられるならエクイティでも問題ないと思いますが、資金調達が目的になっていないか、一度冷静になってみてほしいです。失敗したときのことも考えてみてほしい。
私のような慎重なタイプなら、デットを活用しながらスモールスタートして、その中でプロダクトを作るのがおすすめです。しっかり足元を固めてからでも、挑戦はできます。
ーー長尾さん、本日は貴重なお話しいただきありがとうございました。